大東京三十五区亡都七事件―探偵小説

大東京三十五区亡都七事件―探偵小説

 『冥都七事件』『夭都七事件』と続く阿閉万と玄翁先生の探偵譚もこれが最後。三部作二十一事件を存分に堪能いたしました。なんといっても小気味のいい文体が本当によかった。物集高音の作品は他にも幾つかあるみたいなので読んでみるつもり。この講談調以外の文章が想像できないんだが,どんな感じなんだろう。
 最後まで作品の雰囲気は健在。気分の悪くなるような事件を扱った物語もないわけではないし,救いがたくやるせない物語もあるんだけど,それでも決して後味が悪いわけではない。そりゃまあ,よくもないんだが。今回は特にその手の事件が多いように思われます。惜しむらくは『冥都七事件』では作品を通じる1本の線を感じられたのが,『夭都七事件』『亡都七事件』は単なる短編集のようになってしまっていたこと。悪くはないけど仕掛けを期待していただけに拍子抜けしてしまいました。