青空の卵 (CRIME CLUB)

青空の卵 (CRIME CLUB)

 なんとなく手に取った本。創元クライムクラブだから外れは少ないよなとか思ったし。それにしても男性っぽい名前だけど,よく考えると中性的な名前の作家って,たいてい女性の方だね。この作者の坂木司も女性でした。
 甘々。それを苦手もしくは完全に受け付けない人もいるに違いない。オレにとっては結構好みの作風ではありましたが,それでもやはり辟易とする箇所は多々ありました。20代後半の男性2人が相互依存にあるってのは,その手の関係が好きな趣味者の方はともかくとして,少なくともオレなんかはどうなんだろうと思ってしまうわけで。その意味では引きこもりの鳥井よりも語り手の坂木のほうがオレにとっては苦手な部類なのかもしれません。ああ,あと毒舌と表現されている鳥井の悪口雑言はあまり好きじゃない。対人関係能力が未熟ということを際だたせたいのかもしれないけど,ちょっとね。
 とまあ,文句を連ねてはいますが,上でも書いたように作風は好み。東京創元社らしい日常系のミステリに仕上がっています。何より好きなのが5つの短編を通して徐々に坂木と鳥井の交友の輪が広がっていっているということ。話を追うごとに以前の物語で出た人物が再登場してくるんですよね。後書きの座談会でも書かれていますが,使い捨ての登場人物が殆どいないのは好感が持てます。5編のうち際だっていい作品というのはないんだけど,総合的に見てどこか好きな作品。ちょっと不思議な感覚。続きがあるということなので楽しみです。
(追記)
 文庫が今月出るのかー。とりあえず購入しようそうしよう。