博多長浜を舞台とした連作短編集。ちなみにタイトルになっている“親不孝通り”とはかつて予備校が多く集中していたことから名付けられた通りの名前。僕みたく博多に馴染みのある人間はともかくとして,全国的にこの名前って知られてるんだろうか。ちょっと不思議。
 長浜で屋台を営むテッキと結婚相談所の職員キュータ。この2人が出会う犯罪の数々が描かれます。海の中道福岡ドーム大濠公園など博多近郊の人間にとってはなじみ深い地名が出てくるのも嬉しいところ。そしてテッキとキュータはともによくいってチンピラといった風情の裏社会の顔を持ちながら,それでも純粋で優しく人間味に溢れているのがたまりません。博多署の悪徳警官もなかなかにいい味を出しています。好きにはなれないけど,こういった人種も必要悪なのかな,と。
 収録の6編はどれも唾棄すべき犯罪を犯罪を扱っていますが,それでもどこか清冽な印象がするのはやっぱりテッキとキュータの存在によるところが大。それが色濃く出ているのが「ハードラック・ナイト」と「センチメンタル・ドライバー」。特に「センチメンタル・ドライバー」は好きな作品。
 雰囲気としては異なるけど『支那ソバ館の謎』と同様に上手く地域の特殊性を生かしているなといった印象。相変わらずこの作家さんの作品に外れはないです。