おまけのこ しゃばけシリーズ 4

おまけのこ しゃばけシリーズ 4

 長崎屋の若旦那を主人公とする妖怪江戸もの人情ミステリの第4作目。作風も安定して,安心して読むことが出来ます。今回は吉原からの遊女の足抜けなんて話もあったりして,より人情時代小説の方程式に乗っ取ってる感もあり。仁吉と佐助の兄やコンビも勿論ですが,屏風のぞきや鳴家といった脇役陣にもスポットライトが当てられてるのが嬉しいところです。
 収録の5作のうちでは「畳紙」と「ありんすこく」の2作が好み。どちらも事件性はごく薄い人情味に溢れる作品。特に「畳紙」は僕の贔屓の妖怪屏風のぞきが活躍するのが嬉しいです。一方で「こわい」は狐者異という名の妖にまつわる騒動の顛末を描いた作品。その生まれつきの性ゆえに妖怪仲間からも敬遠される狐者異が哀れではありますが,逆にいえばそれは狐者異としての性ゆえに仕方がないのかも。最後の部分で若旦那を見つめる屏風のぞきの姿が印象的でした。