樹上のゆりかご

樹上のゆりかご

 荻原規子って好きな作家のはずなんだけど,今まで読んだことがあるのは《勾玉》三部作だけ。それ以外の作品を読むのは初めて。
 懐かしくて,そしてちょっと痛みの残る物語。主人公ひろみの通う辰川高校は僕の通ってた田舎の平凡な高校とは違って非常に個性的。自分の高校時代と照らし合わせると現実感はないんだけど,都会の進学校というのはかくも自由が許されるものなのだろうか。それがちょっと不思議。けれども,ひろみの眼を通して映される生徒たちの姿は僕の高校時代とはそれほど変わらないはず。だからこそ,懐かしさを感じるし,また痛みも感じるのかな,と。ひろみと夢乃,そして有理。3人の女子生徒それぞれの対比が印象的な作品でした。個人的には夢乃はちょっと苦手。ひろみは嫌いじゃない。有理は割と好きな感じかもってとこですね。
 タイトルはマザーグースの歌から。確か荻原規子の別の著作でもマザーグースの歌を題名にした作品*1があったよなと思って調べてみたら,この作品の前日談にあたる姉妹作だったみたいです。先にそちらを読むべきだったかも。それほど物語としては深い繋がりはなさそうなのが幸いですが。

*1:『これは王国の鍵』