風の向くまま (創元推理文庫)

風の向くまま (創元推理文庫)

 読了。
 1930年代,恐慌後のアメリカの片田舎を舞台にしたミステリ。没落した上流階級の兄妹が主人公なんだけど,そこに悲壮感はまるでなかった。この雰囲気は主人公ロバートとリリーの性格に因るものが大きいんだろう。お調子者で脳天気な兄としっかりものの妹という組み合わせは類型的だけど,それ故に逆に安心して見ていられる。しっかりしたリリーはもちろんのこと,脳天気なロバートも聡明な人物のようで,この2人の会話が楽しいです。
 ミステリとしてはごく凡庸だけど,まったく気にならない。ミステリそのものよりも1930年代アメリカの片田舎の風情とそこに暮らす人々の姿が印象的でした。続編を読むのも楽しみ。