ガラスの麒麟 (講談社文庫)

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

 何度目かの再読。というか,加納朋子の作品で再読しないものなんてないのだけれど。それくらい好きな作家さんです。
 ただこの作品はその中でも苦手な部類。というのも作中で大きな役割を演じる2人の女性−安藤麻衣子と神野菜生子−の思考がまるで理解できないから。神野先生はともかくとして安藤麻衣子は本当に理解不能。だから感動といった種類の感情を得ることは出来なかった。それは初読のときも今回も同じ。未だに理解も納得も出来ていない。
 構成としては6編からなる連作短編集。作者の得意な形といってしまえばそれまでだが,やっぱり単なる短編集よりもこっちのほうがいい。一番好きなのは「暗闇の鴉」。結局ハッピーエンドで終わる作品に魅せられるのである。あと,作中で星座の話がでてくるのも,この話に惹かれる理由なのかも。元来,“宇宙”とか“月”とか“星”に関係した物語には評価が甘くなるので。タイトルだけなら「おしまいのネメゲトサウルス」も好き。中身には不満もあるけれど。