ワーキングガール・ウォーズ

ワーキングガール・ウォーズ

 女性って怖いですね(感想)。
 というわけで何の気なしに手に取った柴田よしきの連作短編小説。ミステリに分類すればいいのかだろうか。どっちかというと青春小説的な色合いも強いように思うけど。東京の音楽企業に勤める墨田翔子とオーストラリア・ケアンズで旅行会社に勤める嵯峨野愛美。この二人が代わる代わる主人公を務める7つの短編で構成されている。彼女たちの生活の中に現れるちょっとした事件を描いた作品ということで,変調ではあるけど《日常系の謎》に連なるミステリといえるかもしれない。
 個人的には愛美サイドの物語が好み。舞台がケアンズということで,少なくとも自分にはリアリティが薄いのが逆にいい方に作用しているのかも。これが翔子サイドだと幾ら戯画化されているとはいえ日本の企業が舞台ということで妙な生々しさを感じてしまう。というわけで一押しは「ペリカンズ・バトル」かな。次いで「リバーサイド・ムーン」といったあたり。それにしても翔子サイドを読んでいると女性の強かさにある意味で感嘆を覚えます。こんな心理戦をしている相手に男が勝てるわけないな,と(苦笑)。
 とりあえず満足。充分に楽しむことが出来ました。翔子と八幡くんとの行方も気になるし,続編があると嬉しいな。その際にもきちんと愛美を出して欲しいものです。