大東京三十五区 夭都七事件

大東京三十五区 夭都七事件

 『冥都七事件』に続く売文業の阿閉万を主人公,というか狂言回しに据えた昭和初期を舞台とする探偵譚。もちろん探偵役の玄翁先生こと間直瀬玄蕃も登場します。前作の終わり方が終わり方だっただけに気になってたけど,普通に再登場を果たして逆に拍子抜け。オレ好みの佳人諸井レイテエフ尚子女史も出番が増えて嬉しい限り。
 相変わらずオレ好みの怪奇に満ちた,それでいて後味の悪くない講談調の語り口が素敵。一度はまるとやみつきになる文体だと思います。物語としても怪談めいた事件を玄翁先生が鮮やかな推理で解き明かす爽快感は健在。ただ前作と比して違うのは,説明のつかない怪異で終わる物語があったということ。これがちょっと残念でもあり,されどこういう終わり方も余韻があっていいかなとも思ったり。
 とりあえず残す1作『亡都七事件』を堪能したいと思います。できれば,ずっと作品の世界に浸っておきたい雰囲気が魅力的です。決して深みはないけれど,その軽さが心地よい作品だと思います。