仔羊の巣 (創元クライム・クラブ)

仔羊の巣 (創元クライム・クラブ)

 さあ,どう評価しようか。
 もともと性善説すぎる作品ってものにそれほど抵抗感はない。じゃなければ,こんなに加納朋子の作品が好きにはならないだろう。甘すぎる感はあるけれども,許容範囲の内。苦手とする人ならば絶対に受け付けないだろうけれど。坂木と鳥井の会話にかなり辟易としたものはオレだって感じたし。他の人との会話はそうでもないんだけど。
 むしろ個人的に問題なのは坂木と鳥井との関係を“気持ち悪く”思ってしまう自分の感情に気がついてしまったから。自分の常識の範囲外にあるものに無条件で嫌悪感を抱くのは忌むべき行為だと思っているだけに,その意味では自分にとって非常に“痛い”作品です。読後にそのことに気がついてちょっと鬱りました。もちろん理解できない人間は理解する必要がないと思うし,嫌いな人間を好きになろうとする必要もないとも思うけれど,それも故あらばこそのはず。もっと成熟した人間にならなきゃダメです。
 収録の三編は結果的にはどれも心温まる素敵な作品です。オレみたく余計なことを考えながら読まなければ楽しめるんじゃないでしょうか。前作『青空の卵』を読んでみて気に入れば是非。あれが受け付けなきゃ,これもダメだと思う。
 佐久間さんとか巣田さんとか明日香ちゃんとか魅力的な女性の存在は嬉しいです。勿論,滝本とか下島さんみたく魅力的な男もいるにはいるんだが,どっちかというと女性の印象のほうが強いな。