ねこのばば しゃばけシリーズ 3

ねこのばば しゃばけシリーズ 3

 長崎屋の若旦那一太郎と手代で妖怪の仁吉と佐助を中心とした江戸もの人情ミステリ。相も変わらぬ独特のゆったりとした雰囲気が魅力的です。第一作目の『しゃばけ』こそ長編だったものの続く『ぬしさまへ』『ねこのばば』は短編集。どちらかというと後者のほうが作風に見あっているように思います。
 収録されている5編のうち特に好きなのは「たまやたまや」と「ねこのばば」。特に「たまやたまや」は幼馴染みの婚約者を巡って奮闘する若旦那の姿が格好いい。最後の切ない感慨も印象的です。一方で「ねこのばば」「茶巾たまご」はあやかしよりも恐ろしい,人間の感情を題材にとった作品。あやかしのほうが純粋な分,余程に親しみを持ってしまいます。
 ミステリとしてはごく薄い風味の作品ではありますが,江戸を舞台とした人情作品として楽しめると思います。何より妖怪好きにはたまりません。特に今作では僕の一番好きな妖怪ネコマタが登場してるしなあ。