文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

 読了。
 悪くはないけれど,《妖怪》シリーズの中の一冊としては少々物足りなさを感じる。15年前に端を発する悪趣味なゲームにどうも馴染めない。異常なまでの濃厚さを感じた『絡新婦の理』までに比べると,物語としては長く大きいものの淡泊な印象を抱いた。中禅寺秋彦を中心とする京極堂一味や『狂骨の夢』の朱美など,シリーズの中核メンバーがほぼ総登場というのは嬉しい。出てこなかったのは今川くらいのものかな? 木場や敦子ちゃんの描かれ方はちょっと不満だったけれども。特に敦子ちゃんはいつもの凛とした姿が影を潜めていたのが残念。また,このゲームの審判役を務めた人物の存在にははっきりと不満。明らかに中禅寺と正反対に位置する人物だけに,これからこの人物との対比が軸となるようでは,《妖怪》シリーズとしての興を削がれるように思う。蛇足だけど,伊豆山中に伝わるのっぺらぼうの正体は面白かった。
 とりあえず,京極作品の再読祭はこれでひとまず終了します。