太陽王と月の王 (河出文庫)

太陽王と月の王 (河出文庫)

 1980年に刊行された同名の著作の文庫化。以前に全集に入っているものを流し読みしたことはあるけれども,通して読むのは今回が初めて。氏らしい清冽で衒学的,かつ明解な文章が魅力的だった。
 人形,パイプ,サド侯爵,宇宙論,神話,文章論などさまざまなテーマのエッセイが収録されている,いかにも澁澤龍彦の作品らしい作品であるが,一番好みなのはやはりルートヴィヒ2世を扱った表題作「太陽王と月の王」か。このエッセイに限らず,幾度か名前の登場するユイスマンス『さかしま』は確か積んでいたはずなのでいずれ読むつもり。アポリネール『月の王』も面白そうだ。また「嘘の真実 私の文章修行」と題されたエッセイは澁澤龍彦自身の文章の書き方について書かれた貴重な作品。私のように彼の文章に魅せられ,憧れる人間にとっては実に参考になる。
 澁澤龍彦の作品を読むたびに私の知的好奇心はいたく刺激される。それもある意味では当然で,今日の私の嗜好思考指向は彼の影響によるところが大きいのだ。やはり私にとって澁澤龍彦は永遠にその背中を追っていく人物に他ならない。