動物園の鳥 (創元クライム・クラブ)

動物園の鳥 (創元クライム・クラブ)

 引きこもりの鳥井真一とその友人坂木司,そして彼らを取り巻く人々が織りなす三部作の最終章。過去二作に関しては苦手感を感じるけれども,好きな作品という微妙な評価だったんだけど,今作に関しては素直に好きな作品と言い切ります。よかった。
 鳥井が,坂木が,滝本が,あるいは今作で登場の松谷明子が,そして谷越淳三郎が抱く無意識の心の傷。それが鮮やかに,というわけではないけれども,少しづつ癒される方向へと導かれる結末が美しい。特に滝本と,彼の友人の寺田結美はシリーズを通じて大好きな2人なので,幸せになってほしいなと思います。ほんの端役とはいえ,塚田くんや安藤さんの登場も嬉しかった。よくをいえば佐久間さんとか明日香ちゃんにも登場して欲しかったけど。でも,まさに最後を飾るに相応しいオールキャストだといえます。それぞれのキャラクターを作者が大事にしている感がうかがえて嬉しい。
 そしてルネ・マグリットを彷彿とさせる表紙のイラストがいい。青空を切り取るかのように,鳥の形をしたより明るい青空が動物たちの入った籠を掴んでいる。この絵はもちろんマグリットの代表作をイメージしたものでしょう。そしてそのマグリットの代表作のタイトルとは「大家族」。まさにこの三部作に相応しいタイトルであるように思います。