桜宵

桜宵

 『花の下にて春死なむ』に続くビヤバー香菜里屋シリーズの第二作目。5編を収録した短編集。相変わらずマスター工藤の作る料理に惹かれてしまいます。この手の美味しそうな料理の描写に関しては北森鴻って当代一のミステリ作家じゃなかろうか。こういうビヤバーに行ってみたいものです。民俗学者*1もごく稀に訪れるみたいだし。
 物語は優しさと切なさ,そして苦さとが入り交じった心に染みる作品ばかり。個人的には表題作「桜宵」や「十五周年」といった作品に惹かれますが,あまりにも綺麗に仕上がりすぎていると見ることも出来るかも。でもロマンチストとしてはこの手の作品がやっぱり好きです。ミステリとしてなら「約束」が一番かな。ただ余りにも後味が悪すぎるのが難点。読後にちょっと背筋に冷たいものを感じました。

*1:勿論『凶笑面』『触神仏』の蓮丈那智でしょう