武装錬金ピリオド

 読みました。泣きました。
 全ての人にとってのハッピーエンド。それを甘いと捉える人もいるかもしれない。でも,僕はこの終わり方でよかったと思う。苦労をした人にはその苦労に見あった,哀しみを味わった人にはその哀しみに見あった,幸せを手に入れて欲しいから。
 細かい感想はまた後で。感情を整理してから書きます。
 ちなみに最終巻には特別読み切りがあるみたいです。ちょっと嬉しい。
 以下ネタバレ感想
 いきなりカラー見開きでのウェディングドレス姿の斗貴子さんをその手に抱くカズキに胸がいっぱいになってしまう。このイラストいいなあ。
 で,本編。
 まさか復活するとは思わなかったパピヨン謹製ホムンクルス軍団。相変わらず鷲尾さんはいい役を担っています。格好いい。そして対するは斗貴子さんと剛太,桜花,秋水というある意味妙な取り合わせ。カズキがいないだけでこの組み合わせにはすごい違和感を感じてしまうな。

諦められるのか? 貴様は武藤カズキを諦めきれるのか?

 と斗貴子さんに告げるパピヨンが本当に格好いい。そしてパピヨンの真意−ただ武藤カズキと対決すること−を理解できていなかった斗貴子さんを見ているとパピヨンがカズキにここまで拘った理由がよく分かる。結局,パピヨンを,蝶野攻爵を理解していた人間はカズキだけだったんだな,と。
 最終話にして明らかになったのが千歳さんと毒島ちゃんの武装錬金。千歳さんはレーダーの武装錬金ヘルメスドライブ。毒島ちゃんはガスマスクの武装錬金エアリアル=オペレーター。残念ながら毒島ちゃんの素顔は結局明らかにされませんでした。でもこれでよかったのかも。
 舞台は変わって月へ。重力操作の特性を持つ大戦斧の武装錬金フェイタルアトラクションを使ってカズキを地球へと戻そうとするヴィクター。そして

駄目だ! オマエも来るんだ! ヴィクトリアが待っている!!
もう戦う意志がないなら ヴィクター 共に生きる新しい道を探そう!!

 と叫び,ヴィクターをも地球へと連れ帰ろうとするカズキの姿はまさに少年漫画のヒーローそのもの。この姿に僕は惚れたんだなと今更ながらに思います。
 宇宙空間に漂うカズキをシルバースキンを纏った斗貴子さんが受け止め。

キミが死ぬ時が私の死ぬ時
いや…キミと一緒に生きていく
もう離れない
今度こそキミと私は一心同体だ

 と抱きつき,笑顔を見せる場面はもう最高。この場面を見るために『武装錬金ピリオド』を待っていたようなものです。そして斗貴子さんへの思いを断ち切って,涙を拭う剛太の姿もまたよかった。男だよ,ゴウチン。
 で,ここで終わらないのはまだカズキとパピヨンとに決着が付いていないから。残る力を振り絞っての一撃だけの最後の対決。単行本2巻でのカズキとパピヨンとの戦いを思い出します。この手の余計なこと省いたスピード感あるアクション場面は好きです。にしても

殺れ 今度はしくじるな

 という笑みを浮かべたパピヨンの台詞がしびれる。ただパピヨンならこの言葉にカズキがどう返答するかは分かっていたような気がします。
 あとはいろいろな後始末の場面が続く。白い核鉄を使って人間へと戻ったヴィクター。アレクの今際の言葉を思い出してヴィクターに泣きすがるヴィクトリア。ヴィクトリアが見せた初めての女の子らしい表情です。それでもこの親子が再会できて本当によかった。
 錬金戦団は活動を一時凍結。仇敵としていたホムンクルスを人間に戻す研究をすることになりました。剛太は戦団に残る道を選びます。

…それでいい
それなら俺達はずっと戦友だ

 カズキと固く握手を交わす剛太。実は一番見たかったのがこの場面。剛太は『武装錬金』の中でも特に好きなキャラだけに笑顔での別れはやっぱり嬉しい。
 やはりパピヨンを殺せなかったカズキ。生き残ったパピヨンは蝶人パピヨンとして愉しんでいるようです。っていうか,これからどうする気なんだろう,コイツ……。そういえば核鉄は戦団が管理するってことはエンゼル御前ももういないのか。淋しいな。
 最後はカズキと斗貴子さんをまひろたちが迎えて終わり。やっぱりこの終わり方しかないでしょう。桜花と秋水の行く末がなかったのはちょっと残念だったけど,ろってりやの店員もひとこまだけ顔を覗かせていて嬉しかった。
 というわけで『武装錬金』はこれで本当に完結,だよね。残すは最終巻収録の特別読み切りだけのはず。個人的には大満足です。一度は打ち切られたとはいえ,ここまで素敵な結末を見せてくれたら何も不満はありません。